Monday, August 8, 2016

新聞記者の正論。



 拝啓 中西奈緒様、 

羅府新報で活躍された中西奈緒さんがこのたび退職され、日本へ帰られることになりました。そこできょうは、謹んで申し上げるの意で手紙のはじめに書いて敬意を表す「拝啓」という言葉を、その本来の意味にのっとって文章を書きます。
中西さんを知るようになったのは、敬老の売却問題が公になり、敬老の経営陣がコミュニティー・ミーティングを主催した去年の1015日にさかのぼります。カメラ片手に会場の隅から隅までくまなく動き回る一人の女性が目につきました。新聞記者ということは知らなかったのですが、その懸命に打ち込む姿が印象に残りました。
その後、羅府新報の記者であることを知るようになり、記事を読むようになってから、あなたが書かれる「正論」に魅せられるようになりました。たぶんこれが最後の記事かも知れませんが、あなたが書かれた『ショーン三宅代表の引退』を引用します。これは、去る79日と713日に連載された記事です。

22年間という長い年月、代表兼CEOの椅子に座り続け、630日をもって引退した三宅氏のいわゆる「ワンマン経営」に関しては日系社会に長く疑問の声があった。
今回の敬老売却のプロセスが不透明であったことが、その疑問に拍車をかけ、大規模な売却反対運動が起きるきっかけともなった。それゆえ、三宅氏の進退については、日系社会の大きな関心ごとであったが、ひとつの節目を迎えたといえる。
売却に反対したコミュニティーメンバーからは、理事会のすべてのメンバーも含め「罷免」を求める声も多く聞かれた。しかし、最終的には三宅氏のみ引退し、理事会メンバーはそのまま残る形となった。(中略)
三宅氏本人を表舞台に出さず、川口理事長が三宅氏を守るように対応する方法は結局最後まで続くこととなった。三宅氏は理事会に雇われていた身である。しかし、22年の歳月とともに理事は入れ替わり、次第に三宅氏の権限が理事会よりも大きくなっていったことが考えられる。三宅氏の独走ぶりを止めるどころか、むしろ、三宅氏をかばい続けた理事たちの責任は大きいといえるだろう。日系社会の大切な財産である敬老4施設を、一部の人間の判断で失ってしまったことは、悔やまれる。
敬老は4施設が売却されて5カ月がたった今でも、具体的な将来ビジョンや、4100万ドルの売上金の使い道などをきちんと示していない。
さらには、売却時に州司法長官が設置を義務付けた「コミュニティー諮問委員会(コミュニティー・アドバイザリー・ボード CAB)が機能していないだけでなく、極めて不可解な動きさえ見せている。
CABは本来、新しいオーナーの運営を助け、助言し、監視し、さらに日系コミュニティーとの橋渡しを担うものだ。問題があれば州司法当局に報告する役割も担う。
メンバーは10人以内とされ、敬老側が人選を行った。そのうちの3人は州司法当局の通達により「高齢者を守る会」から選ばれることになっていたが、つい最近までその3人はミーティングの出席を拒否されていた。最近になってようやく川口理事長から応募書類を提出するように指示があり、3人のうち2人がメンバーになることを許可された。
羅府新報はCABの代表ブルース石松氏、さらに川口理事長に何度となく情報公開を申し込んでいるが、いまだに誰がメンバーなのか、どのような話し合いがされているのかなどまったく情報が公開されず、秘密裏に話し合いが行われている。
売却プロセスにおいても「不透明」であることが指摘され、大きな反対運動が起きたにも関わらず、いまだに「不透明」なままで、日系コミュニティーを困惑させ、信用を失わせたままでいる。

新聞社というものは、中立の立場であろうとするのを知っております。どっちつかずの生ぬるい評論になることが少なくないのも承知しております。
ですがあなたは、敬老問題の取材にあたり、一貫して「正論」を書いてくださいました。信じることに真っ向から突き進む姿勢に爽やかを感じました。そして、あなたの正義を見ました。上に引用した記事が、その典型でした。
あなたの勇気を心に刻み、手本にして正義を追い続けます。あなたの高志を無駄にはいたしません。中西さん、ありがとう。

ジョン金井

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