Thursday, September 15, 2016

二百万ドルの行方。


旧敬老引退者ホームに平田さんというボランティアがおられました。三宅さんも良くご存知でしょう。2百万ドルという大金を寄付された方ですからね。平田さんは物静かな方でした。引退者ホームのアクティビティーを引き受ける部署で25年という長い年月(としつき)をボランティアに費やされたのです。つまり大御所と呼ばれるような存在なのですが、そのような素振りを見せたことは一度もありませんでした。


私のボランティアの日に出向くと、平田さんは決まって部屋の奥にあるご自分の机に座っておられました。静かにコンピューターに向かって作業をされているのです。近づいて行くと、いつもこぼれんばかりの笑顔で迎えてくださいました。
この方の訃報はすぐに知ることとなりました。週一のボランティアに出向いたのですが、いつもの席が空いてます。そして、机の上に白い花と平田さんの写真が置いてあったのです。下半身から血が引くのを感じました。黒縁の額に収まった平田さんの写真は、いつもの笑顔が満載でした。2015年の4月だったか、5月だったか。
その数か月後だったでしょうか。平田さんが敬老のために残された2百万ドルのことをちらほら聞くようになったのです。それは、敬老からパシフィカ社への売却が決まりエスクローに入ったことが明るみになった頃と時を同じくします。その2百万ドルの行方を案ずる声が渦巻き始めたのです。
人づてに聞いた話です。平田さんの夢は、アクティビティー用の建物を改築することだったようです。居住者の方々のアクティビティーのために25年の歳月を捧げた方です。みなさんが残った人生を明るく楽しく過ごされるための建物を、と思われたようです。
最新式の照明と音響効果を備えた舞台を夢見られたでしょう。その上でハワイアン・ダンスに熱中し、日本舞踊に興じるみなさんの姿を思い浮かべたでしょう。入居者のみなさんが心待ちにする日本の映画を、最新式の映像を通してご覧いただけることを夢に描かれたでしょう。
ボイル・ハイツの敷地内に立てるのです。土地代は要りません。2百万ドルは丸ごと建物とアクティビティー用の装置に充てることができるのです。英語で言うところのstate of the artの最高の物ができるはずです。

ここでちょっとばかり視点を変えてみましょう。三宅さん、あなたの立場での見方です。平田さんが亡くなられた時には、すでにパシフィカ社への売却は決まりエスクローに入っていた。もちろんドネーションの取り決めは亡くなられる前に成されたでしょう。エンサイン社への売却が決まったのが2014年の717日でしたから、あなたはそれ以前から敬老を売ろうと目論んでいたはずである。
平田さんのドネーションがいつ提示されたかは知りようもありませんが、そこには、アクティビティー用の建物のために使うようにと明記されてあったはずです。その時のあなたの心持ちというのはどういうものだったのでしょう。
土地も建物も人手に渡った後、その200万ドルをどうするつもりだったのでしょうか。他人の土地に平田さんの望む最新鋭のアクティビティーの殿堂など立てられるわかないですからね。「三宅さんの弁護士を使ったそうだから、どんな仕掛けがあるのかは知れたもんじゃないわ」という噂も聞こえてきますし。
今年の一月だったと記憶します。アクティビティー・ホールへ入るなり、入り口の壁に“Mr. & Mrs. Hirata Hall”と書かれてあるのが目に飛び込んできました。入居者のみなさんの200万ドルを案ずる声が大きくなったのでしょう。それをかわすためのジェスチャーを取られたのでしょうか。だとしたら安すぎる。何百ドルもかかる物ではないでしょう。
舞台の幕も新調されたようですね。これだって何万ドルもする物ではない。あ、そうそう。「緞帳(どんちょう)を新調したのは良いのだけれど、そういう場合、寄贈者の名前が入るのが普通でしょ。だけど、案の定省いてるからね」という声もあちこちから聞こえてきます。
コンピューター・ルームのコンピューターも買い替えたと聞きました。ですけどいくら最新式のコンピューターを入れたとしても、総額一万ドルには達してないでしょう。すると、残るは199万ドルだ。

拝啓 ショーン三宅殿、
さあどうしますか。法律で決まっていると言うじゃないですか。NPOへのドネーションは、その目的以外の用途には一文たりとも使っちゃいけないのでしたね。亡くなられた平田さんの気高い遺志を暗闇に葬らないでくださいよ。平田さんのwishは最新式のアクティビティーの殿堂を残すことだったのですからね。それを見届けるまで私は死ねません。多くの方が私と同じ気持ちでしょう。

追伸
これを発信する段になり、アクティビティー・ホールの音響装置が新調され、200あまりの椅子も買い替えられたという情報が入ってきました。かといって、これも何10万ドルもするものではない。高く見積もっても2万だろう。すると、残るは197万ドルだ。

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