ショーン三宅様、
知り合いに、リンカーン・ハイツで20年間ボランティアを続けた方がいます。介護施設ですから、寝たきりの方、車椅子に頼る方がほとんどです。自分の意思で部屋を出たり、建物の外へ出るということはできない。つまり、外の世界、外の移ろいを感ずることのない毎日を送られているのです。
この方は毎週、その時々の草花を用いた刺繍のような小作品を作りました。そして、リンカーン・ハイツへ赴くのです。入居者のみなさんに外の季節を知っていただくためにです。この方は、そのように費やした20年間を時間に直すと3000時間になると言われました。
入居者の方たちが残された時間を心安らかに送っていただけるようにと思う気持ちが、そのように導いたのです。その日本式の心遣いが、日本文化の機微に浸ることを可能にしたのです。
過ぎた30年間、草木の手入れを続けたガーデナ連盟の方を存じています。日本式の剪定を施すことによって、日本の文化を絶やさないためです。30年の月日というと、赤ん坊が生まれ育ち、結婚をし、次の世代の赤ん坊が生まれるほどの時の流れです。
日系人・新一世を問わず、日本をルーツとする人種は他の人種に比べボランティア精神に富んでいます。世のため、人のためを念頭に生きる人が多いようです。おとなしいです。己をひけらかすことも多くありません。
三宅さん、敬老はラッキーだったと思います。このようなボランティアの方々が、過ぎた50年間、敬老を親身になって築き上げてくださったのですからね。その数は何千人にも上るのでしょう。まさに天国のようなところでしたね。あなたが敬老と居住者を売り飛ばすことを決めるまでは。
話を2015年10月15日へと巻き戻しましょう。西本願寺で敬老主催のパブリック・ミーティングが開かれました。500人の売却反対派で会場は膨れ上がりましたが、そこであなたは、非常に不躾な発言をされました。
「敬老がパシフィカ社に売られてもシステムは同じでスタッフも同じ、ボランティアもそのままステイする」と。その時私はムラムラと来ました。“口から出まかせも甚だしい。持ち主が変わってもそのままボランティアとして留まって欲しいとか、続けて欲しいなどと言われたことなど一度もない。いい加減にしろ”という思いが横切ったからです。そして、“冗談もほどほどにしろ。非営利の敬老だからボランティアに没頭してんだ。営利を目的とする会社のためにできるわけないだろう”と憤慨しました。
買手は不動産開発会社です。レントの据え置きは一年足らずです。“日本文化の機微に基づいたケア”の保証は5年間だけです。すなわち5年が過ぎると、不動産会社の思い通りになるのです。5年後には潰して高層ビルを建てるだろうというのが大方の予想です。
私の敬老でのボランティアは、エスクローがクローズするまでの6年と少しの期間続きました。日本へ行く用があった時以外は、一度も休んだことはありません。入居者のみなさんの余生を豊かなものにという気持ちでやったからなのでしょう。風邪を引いて休むということもありませんでした。日本へ行く用がある時には、ボランティアが終わった次の日に発ちました。もちろん戻って来るのは、ボランティアの前日でした。
多くのみなさんが、そのような意気込みを持って続けたと思います。何千人ものボランティアが、そのようにして敬老を盛り立て続けたのです。それをあなたは「ボランティアもそのままステイする」と軽々しく言った。数千に上るボランティアの崇高な気構えを踏みにじるとは不躾もいいところだ。
拝啓 ショーン三宅殿、
人づてに聞いたことですが、あなたは日系テレビのインタビュー番組で「これからはボランティア活動に励みたい」という発言をしたそうですね。一言、申し上げます。ボランティアの何たるかも知らない御仁が、そのようなことを出まかせで言うもんじゃない。
ジョン金井